病理研究検査科

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やぶにらみ現代病院病理事情

2013年10月1日

皆さん、病院には病理医という医師が働いていることをご存じでしょうか。

日本の医療をよくするためには、病理診断の質的向上が大きなポイントの1つとなります。医療は大きく3つに分けられます。診断、治療と予防です。病院で行う医療は診断と治療です。病理診断は診断の中ですごく大切な地位を占めています。とくに癌の場合は最終診断になることが多い訳です。

アーサー・ヘイリーというアメリカの人気作家が『最後の診断The Final Diagnosis』という素晴らしい小説を書いています。そこでは、40年前のアメリカの一地方病院で、臨床医の一員として生き生きと、また悩みつつ働く病理医の姿がリアルに描き出されています。

病理診断を行う病理医は、当然診断行為をするわけですから、臨床医として認知されなければいけないのですが、わが国では、医学部においては基礎医学、病院では検査の一部と見なされて、臨床科の1つとして今もって認知されないのが僕らの大きな悩みなのです。

さて、病理診断には3本柱があります。病理解剖と組織診と細胞診です。組織診は内視鏡でとった生検組織や手術材料を肉眼、顕微鏡でみて診断するという、病理医の一番メインな業務です。細胞診は乳腺ではとくに大切なのですが、針で刺して、あるいは綿棒で擦過して採取した細胞の姿を顕微鏡でみて、癌かどうか、感染症かどうかを判断します。

術中迅速診断では、生の組織を凍結させて薄く切ってから染色が施されます。材料が病理検査室に提出されてから診断が下されるまでに10分足らずですみます。生検材料や手術材料はホルマリンというちょっと臭い液体につけて固定し、早ければ翌日、普通だったら翌々日に診断されます。欧米ではほとんどの市民が病理医pathologistを知っています。ひとつは病理医の数が問題です。アメリカでは、病理診断医と検査医の数が医者全体の2.6%です。日本の認定病理医は0.7%。しかも、この中には大学でおもに実験をやっている人もいるのです。日本の病理医はかなり手が少なく、1人当たりの仕事量が多くて、忙しい。

病理医のいない300床以上の病院の院長に病理医を置かない理由を聞きますと、「非常勤がいる」や「外注で十分」もありますが、一番多い理由は「人材がいない」、つまり、大学の講座にさえも充分な病理医がいないのです。この辺りの事情は、藤田保健衛生大学医学部病理学教授堤寛教授の著書を参照願います。

 

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